Introduction

1932年の初演以来、いまだに世界のあらゆる世代のバレエファン・ダンスファンに圧倒的な人気と芸術的評価を得ている「緑のテーブル」。その作品の完成度からも、舞踊表現を無限に拡大させたクルト・ヨースのその時代に果たした芸術的な貢献からも、まさに近代バレエの頂点に立つ作品である。
身勝手な指導者たちの衝突と、戦争を利用する者の暗躍、それに振り回される兵士やその家族の葛藤…。戦争の破壊力の無能さをシュールレアリズム風に表現する。
2台のピアノによる迫力の生演奏。細部までこだわり抜かれた構成とその舞踊表現。バレエやダンスのファンのみならず、すべての表現者へ届けたい。
Comment
本作上演に際し、英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団の芸術監督を長く務め、スターダンサーズ・バレエ団の芸術顧問でもある、サー・ピーター・ライト(ヨースのカンパニーで「緑のテーブル」を踊った経験あり)と、バレエダンサー、俳優、振付家の西島数博氏から、コメントが届きました。

クルト・ヨースの偉大な作品「緑のテーブル」を上演するスターダンサーズ・バレエ団を、心より賞賛します。私自身、1939~45年の世界大戦中、クルト・ヨース率いるヨース・カンパニーにおいて本作に登場する「旗手」を踊ったこともあり、当時の記憶は今でも鮮やかに蘇ります。
指導者たちの議論はやむことがなく、被害者たちは死に誘われ、語られるのは戦争の無益さです。そしてその議論は、今日もなお続いているのです。

この作品に初めて出会った時、驚きに心を弾かれたことを今でも覚えています。1932年パリで初演された『緑のテーブル』は、第1次世界大戦後、まだ世界中が不安な空気に染まっていた頃に創作されて、反戦というテーマを持つこの作品を、今を生きるダンサー達がどのような感性で演じ、どのようにお客様へ伝えることになるのか、とても興味深く感じています。ピアノが持つ繊細な旋律のなかで、舞台中央にある緑のテーブルと怪しげな仮面の男たちの身体表現は、かなり衝撃度が高く強いインパクトを与えます。
平和会議という緑のテーブルですが、とても恐ろしい企みに見えるこの作品、スターダンサーズ・バレエ団が伝える強烈なメッセージを受け取り感じてほしいと思います。平成が終わり新たな時代が来る年にまたひとつ考え深い上演になると期待しています。
History
ドイツ表現主義とクルト・ヨース
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1901年、ドイツのシュツットガルト近郊のヴァッサーアルフィンゲンでクルト・ヨースは生まれた。
1920年代、形式的な古典の技法を排して、内面的、肉体的な表現を尊重する「ドイツ表現主義」が提唱された。
ヨースは「ドイツ表現主義」の創始者であるルドルフ・フォン・ラバンと出会う。ラバンの舞踊に傾倒し、彼の下で舞踊を学び、その後ラバンの劇団でダンサーとして経験を積んだ。1926年にはパリに留学し、クラシックバレエを学んだ。
古典であるバレエを否定する「表現主義者」が多い中、ヨースは舞踊表現の基礎としてのクラシックバレエを重要視していた。
美しいクラシックバレエの修練があってこそ、新しい表現主義舞踊が生まれる、という信念を持ち、クラシックバレエの要素を取り入れたメソッドを確立した。 1932年 パリ初演
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1932年パリ、国際舞踊アーカイヴが主催する世界初の国際振付コンクールで「緑のテーブル」は発表された。
斬新かつユニークな構想と振付と、2台のピアノの生演奏によって、人間の微細な感情を表現することに成功したこの作品は最優秀賞を獲得。振付家のクルト・ヨースは世界的な名声を得た。以来、「緑のテーブル」は世界のあらゆる世代のバレエファン・ダンスファンに圧倒的な人気と芸術的評価を得ている。
その魅力は、死の舞踏の苛烈な諷刺力もさることながら、クルト・ヨースがこのバレエで示したユニークな構想と、魔術的とも思えるその振付術によるものである。 戦争に翻弄された天才振付師
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「緑のテーブル」が発表されたのは第一次世界大戦後、さらに大きな世界規模の戦争が起ころうとしている狂乱の時代だった。
人道主義を信じていたヨースは第一次世界大戦の最中も「政府を信じるな、戦争の犠牲になるのは我々だ」などと警告するような左翼的な当時の出版物を読んでいた。
その思想が「緑のテーブル」を作り上げる大きな要素となっている。
ドイツではナチスが台頭し、大きな政治的変化が生まれていた。
反戦をテーマにした「緑のテーブル」は当然ナチスの標的となった。1933年、ナチスは「緑のテーブル」で作曲を担当したユダヤ人フリッツ・A・コーヘンの解雇を要請したが、ヨースはこれを拒否した。ナチスはヨースを強制収容所へ連行することを決定するが、ヨースは団員を連れてドイツから逃亡した。
イギリスやチリなどで活動した後、終戦後の1949年にヨースは再びドイツの地を踏む。
エッセンのフォルクヴァンク芸術学校では後進の育成に努めた。
10代のピナ・バウシュもこの学校でヨースに師事している。 1977年 日本へ、魂の継承
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「緑のテーブル」は近代バレエの最高傑作として、世界中で再演されてきた。
どこで再演される場合でも、クルト・ヨース自らが出向いて振付指導を行うことで、初演から変わらぬ形で作品が継承された。
1977年、スターダンサーズ・バレエ団によって「緑のテーブル」が日本で初めて再演された。ヨースの実娘であるアンナ・マーカードが来日し、振付の指導が行われた。振付の組み立てられ方や人間の行動を左右するモチベーションについて、ダンサーに伝え、作品の理解を促していく。
綿密なリハーサルを繰り返すことで、クルト・ヨースがこの作品に込めた魂が継承される。
アンナ・マーカードの逝去にあたり、本公演からジャネット・ヴォンデルサールが継承者として指導を行う。
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※ 25歳までの学生対象(要学生証)。取り扱いはバレエ団のみ
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